仕事の適性は、解釈で変わる
仕事の適性、という言葉がありますが、私はかつてこの言葉の妄想に
苦しんだ人間のひとりです。最近わかってきたのですが、これまでの私は
世の中にある色んなイメージを、映像や未来像として自分のなかに
取り入れやすい性質があったようです。
人間は先々をイメージして動くことで、ある程度は結果を
コントロールすることができます。しかし、もともと無いものなのに
結果だけ得ようとすると、真剣になればなるほど、得られなかった
事実に苦しむようになってしまうのです。
もう少し具体的にお話しましょう。
仕事の適性、という言葉を聞いて、あなたは何をイメージするでしょうか。
本来であれば、何かをするのが寝食を忘れるくらい好きであって、
それが社会や他人の役に立ち、収入につながれば、
誰でも幸せを感じることができます。
しかし私は寝食を忘れるくらいの何かを見いだす前に、
「こういう仕事で、こういう状態にならなければ幸せではない」と、
先にイメージしてしまっていたのです。
つまり、仕事の適性という言葉の意味を、自分なりに別の解釈をしてしまい、
勝手に苦しんでいたのだということです。
イメージの虜だった私
それは、野球の練習をすること無しに、プロ野球選手になりたくて、
メジャーリーグに行かなければ幸せではないと言っているようなものです。
イチロー選手や松井秀喜選手を見て、華々しい部分だけを取り入れようと
してしまうのと同じなのです(私がプロ野球選手になりたかったのではありません)。
しかし、イチロー選手や松井選手は、野球が好きだから練習をしてきた
はずです。野球をすることが、寝食を忘れて取り組むくらい好きだから、
メジャーへ行きたいというイメージが出てきたのだと思います。
その実力にしても、野球が好きで仕方がなくて、夢中で野球に取り組んできた上で、
同じように野球に取り組んできた集団のなかから、抜きん出てきたのです。
プロ野球の選手になりたい、でも野球するのは好きじゃない。
これでは話になりません。無茶苦茶だ、と思われるかも知れませんが、
実際、かつての私はこの野球の例と同じような思考をしていました。
そういった方は、未だに結構いらっしゃるのではないでしょうか。
イメージの虜だったかつての私は、仕事で成功したいという願望的な
イメージが先行しすぎてしまい、仕事そのもの、作業そのものがどうしても
好きになれませんでした。
メジャーリーグに憧れて野球に真剣に取り組み、本当にメジャーで
大活躍するのは、とても素晴らしいことです。しかし、そういったイメージしか
存在価値を認めず、メジャーで大活躍することしか成功と呼べない、
と思い込んでしまうと、なかなか成功に辿り着けない自分とのギャップが生まれ、
とても苦しくなってしまうでしょう。
事実はそうではなく、素晴らしい活躍のしかたはいくらでもあるのです。
プロ野球選手として活躍することで、ホームの地域活性化に貢献するとか、
プロになれなくても地元の少年野球チームを強くして未来の選手を育てるとか、
プロ野球のいちファンとして、野球の魅力を友人に伝えていくとか、
野球が好きだという軸をもとに、やれることはたくさんあります。
その全体像がとても美しい、という捉え方になると、一人ひとり、
それぞれの立場や置かれた状況で、やらなければならないことが
無限に溢れてくるようになるのです。
そして、そのやらなければならないことに夢中になっているときこそ、
あなたがあなたの適性にマッチした仕事をしているということです。
仕事の適性を超えた、本当の適性
世の中では、仕事の適性を見極めて仕事を選ぶことが正しいという
風潮があります。しかし、仕事の適性など、やってみないとわかりません。
始めは嫌だと思っても、なんで自分がこんな仕事を、と思ったとしても、
続けているうちに面白さを見いだすかも知れないのです。
また、反対に、これは自分に合っていると思っていたとしても、
時代の流れで世の中から必要とされない仕事だったら、ほかの仕事に
乗り換えなくてはならないかも知れません。
ですので、「仕事はこうあるべきだ」とか「自分が就くべき職業はこれだ」
といった、いわゆる表面的なイメージの虜になってはいけないのです。
そうではなく、仕事の中身そのものに取り組み、一所懸命になることです。
ビジネスマンで言うならば、かっこいいプレゼンテーションをすることを
目的としないで、顧客のためを思ってプレゼンを考え、実行すること自体に
美しさ、やりがい、楽しさを見いだすことです。
それができるビジネスマンは、世間一般のビジネスマンというイメージの
枠を超えて、無限の発想力と行動力をもつクリエイターだと言えます。
もちろん、ここで言うクリエイターとは、デザイナーや作家と言った、
特定的な職種を指す言葉ではありません。
自分が光り、周りに貢献していくことが喜びとなる、真に自由な
創造的人間のことなのです。
そのときあなたは、仕事という枠は、本当はなかったのだということに
気がつくことでしょう。枠は最初から無いのだから、枠に適性を合わせる
というのは、言うなれば幻想であり、ファンタジーなのです。
逆説的ですが、真に自由であることが、あなたの適性なのです。
そして、自由であるということは、何もしないことではありません。
自由と無限は同義ですので、あなたは無限のパワーと同調することになるのです。
枠におさまりきらない無限のパワーは、最初から無限にありふれているものですから
意識して使うものではありません。意識した瞬間、限定的になってしまいます。
その無限パワーとともに歩むので、仕事は無意識のうちに、自動的につくられて
いくようになります。
この心の状態になれば、仕事へのモチベーションすら必要ではなくなります。
当然のことをしているだけ、という感覚で、無人の野を行くように、
まっすぐな道を歩んでいくことになるのです。
お読みいただき、ありがとうございました。
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